毎年10万〜20万件の自己破産が!

自己破産がかなりの数にのぼっています。2006年は約16万6000件、ピークだった03年の24万2000件から徐々に減っていますが、98年の10万4000件よりも多いままです(最高裁集計による自己破産申請数)。

サラ金やクレジットローンを利用して多重債務に陥り、返済できなくなってヤミ金融から借金し、過酷な取り立てに自殺したり、夜逃げしてホームレスになる人などが増え、社会問題となりました。03年にヤミ金融対策法が成立すると共に04年には破産法が改正され、自己破産がより利用しやすい制度になりました。

■ 「免責許可決定」がおりなければ借金はなくならない

自己破産を裁判所に申し立てると、裁判所は申し立てた人が支払不能の状態かどうかを審理したうえで「破産手続開始決定」を下し、手続きが終了すれば自己破産が成立します。債権者からの取り立ては停止となりますが、そのまま借金が免除されるわけではありません。「破産手続開始決定」の後に、裁判所が調査、質問する「審尋」があり、「免責許可決定」がおりて初めて借金から解放されます。

また、自己破産を申し立てた人に住宅や車などの財産がある場合は、「破産手続開始決定」と同時に破産管財人が選任され、財産を売却して全債権者に債権額に応じて公平に配分されることになります。その後に「審尋」があり、「免責許可決定」がおります。「免責許可決定」がおりないのは、財産を隠したり、裁判所に偽りの資料を提出したり、破産の原因が浪費やギャンブルの場合などです。ただし、浪費やギャンブルが原因だとしても、裁判所の裁量で総合的な判断で「免責許可決定」がおりることもあります。

■ 自己破産した場合の生活は?

新破産法では99万円までの現金と差押禁止の財産(生活に必要な衣服や家具など)は自由に使えます。恩給や失業保険、年金なども受け取れます。生命保険は解約払戻金が高額であれば、解約払い戻しされて債権者への配当に当てられます。給与も4分の3まで(33万円以内)受け取れます。借家の場合は、破産を理由に契約を解約されることはありません。賃貸料を払い続ければ住むことができます。

自己破産した場合、「破産手続開始決定」が出ると官報に名前が記載されます。ただし、一般の人が官報を見ることはほとんどなく、裁判所が勤務先などに通知することもありません。万一、会社に知られたとしても自己破産したことを理由に解雇することはできません。 自己破産しても選挙権や被選挙権など公民権が停止されることもなく、住民票や戸籍に記載されることもありません。ただし、弁護士や司法書士、宅地建物取引業者などの仕事に就けなくなりますが、「免責許可決定」がおりれば解消されます。財産があって破産管財人が選任され破産手続きが行われている場合は、長期間の旅行などは裁判所の許可が必要になりますが、手続きが終われば自由に旅行もできます。

自己破産の不利益としては、信用情報機関のいわゆるブラックリストに載って5年〜10年くらいは銀行から融資が受けられなくなること、クレジットカードを作れなくなることが挙げられます。また、「免責許可決定」がおりて7年間は、再度の「免責許可決定」は受けられません。

■ セーフティネットとしての自己破産

このように自己破産したからといって、通常の生活にそれほど影響はありません。だからといって、返す意志もなく借金を重ね、遊興に使い果たして計画的に自己破産するというような悪質なケースは「免責許可決定」がおりないでしょう。自己破産は、あくまでも自助努力しても、どうにも返済できない場合の最後の手段なのです。

自殺や夜逃げなどに追い込む違法なヤミ金融の取り立てから逃れるため、あるいは友人や家族、親戚の保証人になって多額な負債を負った場合、失職して住宅ローンが払いきれなくなり借金がかさんで返せなくなった場合、自営で事業を始めたけれど負債を返せず再建のめどがたたない場合など、自己破産は最後の救済策として有効です。生活を再建し、再出発する最後のチャンスと言えます。

自己責任の時代の“借金棒引き”は、今後も増えるのか?

自己破産の件数が89年には約9400件だったのに、バブルがはじけた92年には約43,000件と4倍になり、規制緩和や金融機関の再編成など金融ビッグバンが始まって98年には10万件を超えました。自己破産件数が不況によって膨れ上がったことは明らかでしょう。

しかし金融ビッグバンは、近世から続く日本人の金銭感覚を変えざるを得ない変革だという指摘があります。江戸時代には幕府や藩がすべてを仕切り、明治以降は政府が方針を決めて、国民は従うのみでした。銀行は大蔵省の管轄下で横並びの業務しかできず、国民にとってはどの銀行を選んでも大差なく、地道に定期預金するしかなかったのです。その代わり、政府が銀行を守り、つぶれる心配がないので安心して預けられました。

ところが、現在では銀行といえども破綻する危険があり、金融商品も低利の元本保証商品だけでなく、高利だけれどリスクのある商品も数多くあり、自己責任で金融機関を選び、金融商品を選択して資産形成しなければいけない時代になっています。  金融商品についての知識、クレジットローンの管理など、基礎的な金融教育を受けていなかった人たちも、自己責任で判断しなければいけなくなったのです。牧場で飼われていた羊が、牧用犬も羊飼いもいなくなって柵から放り出されたようなものと言えます。となると、景気が回復するかどうかに関わらず、悪徳商法にひっかかって多額の債務を負う人や資産運用の失敗などによる自己破産も増えてくるのではないでしょうか。

借りたお金は返すのが当然で、借金の棒引きは本来あってはならないことです。しかし、このような過渡期に、最終的なセーフティネットとしての自己破産制度は必要性を増しているのかもしれません。

※引用:MSNマネー預貯金コラム2007年6月11日